Click here, in order to expand.

ララバイ・イン・ザ・ウィンド

 

スコアを購入したい

弦楽合奏のための

初演:2001年11月15日(木) ルーテル市ヶ谷センター

演奏者:アンサンブル・アルゴス : Vn. 友田啓明 ほか


初演時のプログラムより──

 レクイエム(鎮魂歌)を書こうと思っていた。世界のあちらこちらで傷ましい事件が起こり、あまつさえ懲りもせずに際限のない暴力と破壊のスパイラルを演じながら、我々は終焉への道を辿っている。そして、私自身この数年、続けざまに幾人かの親しい人とのお別れをした。

 しかし、生来宗教心というものを持ち合わせない私に魂を鎮めるなどという大それた事は出来そうもない。風の中を千々に漂う悲鳴や慟哭を拾い集めて異形の子守歌にしてみた。

 革命期のロシアを疾風のように駆け抜けて、30歳の若さで自らの命を断った夭逝の天才詩人エセーニンの言葉をかりれば・・・

 今日に始まる死ではなし

 さりとて むろん ことあたらしき生でなし

──前年に母を亡くし、この年姉を病で失った。世情は相変わらずの不景気と社会不安、そして秋には常軌を逸したテロ事件とそれに続く報復の戦争。暗澹とした気分で柄にもなく鎮魂の音楽を作ろうと思った。演奏会を二日後に控えた朝、20年来の親友で同級生、そして同業でもある久光浩君の突然の訃報が舞い込んできた。ショック。京都での通夜に出席したあと東京にあわただしく戻り、演奏会を迎えたが、奇しくも親友の葬儀の当日に鎮魂歌の初演をすることになってしまった。悲しい悲しい演奏会だった・・・